ため、
よりいゝお話を一つでもよけい考へようではありませんか、
皆様!
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もう一つの文句は、
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皆様、私達は夢をもちませう
夢をもたうではありませんか
今から十年のち二十年のち
その頃の日本の
たくましい、よい息子や
健康で、やさしい娘達にかこまれた母
「お母さん……
そんなに、あの頃はものが無かつたの?
それほどとは知らなかつた……
わがまゝをいつて……
お母さん……」
「…………」
母は
日本の母は静かに笑つてゐる
赤のなでしこは
白のなでしこは
母の胸に。
このやうな夢はいかに……
[#ここで字下げ終わり]
かういふ手紙を受けとつて、この婦人の心持には十分同感されましたが、私はこの問題につき、一般のお母さん方に何といつて呼びかけてよいか、その方法に迷つてゐる次第であります。が、私としては、たゞさういふことを提議するだけでは役目が果せないのでございます。多くのお母さん方が、日本の母として、力強くこの戦時下の生活を背負ひ、次代の国民をすこやかに育て上げることについて責任をもたうとなさるならば、この婦人の念願がすでに何等かの形で、あなた方の声となつてゐたことゝ信じます。私は及ばずながら、さういふ声を聞きもらさないやうにするつもりであります。生活のうるほひはまことに、女性の力によつてその多くが保たれるものと信じます。
底本:「岸田國士全集25」岩波書店
1991(平成3)年8月8日発行
底本の親本:「放送 第二巻第五号」
1942(昭和17)年5月1日
初出:「放送 第二巻第五号」
1942(昭和17)年5月1日
※1942(昭和17)年3月10日、11日、13日のラジオ放送
入力:tatsuki
校正:門田裕志
2010年3月1日作成
青空文庫作成ファイル:
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