だ役に立ちましたよ。
プルウスト  (苦笑する)

[#ここから5字下げ]
この時、下男がはひつて来る。
[#ここで字下げ終わり]

[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
下男  ムッシウ・ジャック・グランジュが、お見えになりました。
プルウスト  モルビエ、君は、また話に来てくれ給へ。
モルビエ  お大事に…………。なにか、社へお言伝はありませんか。
プルウスト  今、別にない。ジイドに、あんまり勉強するなつて云つてくれ給へ。

[#ここから5字下げ]
モルビエ、去る。
下男が、ジャック・グランジュを案内して来る。
[#ここで字下げ終わり]

[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
グランジュ  モン・シェエル・マルセル! 思つたほど窶れてもゐないね。
プルウスト  本が出来ましたね。
グランジュ  (手にもつた新刊の自著を相手の手に渡し)これを見せたいのでやつて来たんだ。いろいろ、心配をかけて、どうも…………。
プルウスト  (頁を切つてない本を、そのまゝ開いたり閉ぢたりしてみる)
グランジュ  珍しく誤植の多い本でね。君は誤植は嫌ひだらうな。
プルウスト  …………
前へ 次へ
全23ページ中4ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
岸田 国士 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング