に甘んじるひとつの風情に過ぎないのである。
 近頃しほらしいなどゝいふ女性が一人でもあるかといふ見方もあるだらう。実際はないかも知れぬが、さうあらうと努めて、実はたゞ、なよなよとしてゐるだけの若い女性がないことはない。一方では、見たところ、だいぶん活溌で男などは眼中にないやうな、或は却つてさまざまな男性で眼の中がいつぱいになつてゐるやうな近代娘が、都会にはちらほらしてゐる。さういふ活溌組は、案外、女の「特権」をふり廻して、男の手伝ひなどはしたがらぬものである。
 新しい女性の力と美が、既にどこかに生れつゝあることを私たちは信じてゐる。
 工場に、農村に、都市のまんなかに、健かな肉体と、「仕事」をもつことを矜りとする精神とが、きりゝとした表情となつて、明るい大空のもとを、建設へ! 建設へ! と歩み行く姿を想像する時、日本の将来のために、私たちは女性万歳と唱へたくなる。
 家を守るべきか、外に出て働くべきかを考へる時ではない。何時なんどきでも外へ出て立派に働き得るやうな女性こそ、真に、これからの家庭を力強く守り育てゝ行くことができるのである。即ち、外で働くことゝ家を治めて行くことゝは、少し
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