人であつた。何れも断髪の美人である。
 歯医者さんに歯の治療をして貰ひに行く。独身のこの歯医者さんは、空家同然の住居に機械だけ据ゑて、書生、番人、下僕を兼ねた老支那人と二人で侘しく暮してゐる。
 日本を離れて数年、各処を転々として、最近この町に腰をおちつけたのださうである。
 治療がすむと、私に「これはどうだ」と云つて紙ぎれに書きつけた漢詩のやうなものをみせる。どうも恐縮だが、この自作の七言絶句はたゞ文字を並べただけのやうだ。「長江に船は浮べども帆の影が淋しい。楊州に美人多しと聞くけれども、果してさうだらうか。我は孤独の身を此処に運んだのだが、未だ妖艶わが魂を奪ふ姿を見ない。嗚呼、秋風なんぞ放浪の身に冷やかなる」といふ風なものであつた。
 市場のなかをぶらぶら歩いてゐると、名も知らず、味の想像もつかない食物が、ずらりと店先に並んでゐる広い間口の家がある。奥をのぞくと、いくつもの卓子を囲んで、人々が盛んに飲み食ひしてゐる。料理屋だなと思つてつかつかと中へはひつてみたが、空いてゐる席がひとつもなかつた。
 そこから少し先に、露天の茶店みたいなものがある。昼近くで腹が空いてゐたし、その茶店へ
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