かし世間ではやはりかういふ「お手本」を鵜呑みにして、内心はともかく、表面だけはそのお手本のやうに取りつくつて、大きな顔をするといふ傾向があるやうです。これが昂じて新体制でありさへすれば、人間でなくともよいといふことになつては大変だと私は感ずるわけです。これを少し突つ込んで皆さんに考へて戴きたい。一体に、どういふ人間を作るか、それには根本をどうしたらよいかといふことに就て、われわれは最も深く考へなければならぬ筈ですが、案外、浅いところで止まつてゐるのではありますまいか。
そこで、教育といふ問題に土台を置くとすれば、国民としての自己完成といふことを第一に掲げるにしても、どうしてもこゝに一つ人間的反省を基礎とした国民的自己完成といふ風にハツキリそれを出さないといけない気がする。国民は人間に違ひないのですが、更に「人間的反省に基く」といふことをこゝで強調しなければならぬやうに思ひます。
たゞいまは国防国家に必要な国民を作るといふ方向にすべてがなつてゐる。それに対して各専門部門の者は勿論こぞつて協力しなければなりませんが、そればかりを追つてゐると、今云つたやうな隙間がだんだん広くなつて行きさ
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