をいたるところに現出して、物語の興味を倍加させてゐるのは、流石に老巧非凡な手腕を思はせるが、わけても、少年義夫の描写は、観察の妙と作者の父性的愛情によつて、その技、神に達すといふべきであり、最後の運動会の場における象徴的な挿話は、全篇のフイナーレとして、少年義夫の輝かしい「青春の像」を浮き出させてゐる。近代悲劇の好模範と称してよからう。
山本有三氏は、要するにこの一作によつて、更に古典的な新風をわが文壇にもたらしたといへるが、氏の健康をいくたびか案じさせた長日月の努力が、やうやく酬いられて、今、この美装の名篇を机上に見る愉快は、また格別である。
底本:「岸田國士全集23」岩波書店
1990(平成2)年12月7日発行
底本の親本:「東京日日新聞」
1936(昭和11)年11月11日
初出:「東京日日新聞」
1936(昭和11)年11月11日
入力:tatsuki
校正:門田裕志
2009年11月12日作成
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