ヲ得サリシ所ナルヘキモ今ヤ帝国ノ国際的地位益々揚リ我伝統ノ文化ハ泰西文明ノ吸収ト相俟チ愈々光輝ヲ発シ諸外国ノ青年子弟相率ヰテ本邦ニ留学シ今後益々其ノ数ヲ増サムトスル現勢ニ鑑ミ本邦ニ於テ之ニ必要ナル施設ヲ講シ以テ是等学生ヲシテ安シテ学ヲ励マシムルハ刻下ノ緊喫事タリ
如上ノ事態ニ鑑ミ茲ニ国際学友会ヲ組織シテ諸外国特ニ東方諸国留日学生ノ保護善導ヲ計リ是等学生ニ対シ日常生活ノ便宜ノ供与、日本語ノ学習、本邦諸学校入学ノ斡旋等勉学上ノ援助其ノ他之カ指導啓発ニ必要ナル各種ノ事業ヲ行フヘキ中心機関タル会館ヲ設立経営セムトス固ヨリ本企画タルヤ其ノ性質上之カ遂行ハ容易ニ非スト雖モ官民協力将来ニ於テ仏蘭西ノ「シテ・ユニヴエルシテール」北米合衆国ノ各大学ニ設ケラレタル「インターナシヨナル・ハウス」等欧米列国ニ於ケル斯種ノ施設ニ比シ遜色ナキ設立完全ナルモノトナシ所期ノ目的ヲ達成セムコトヲ期ス
昭和十一年一月
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会長は近衛公爵であるが、同会の事業について氏は左のやうな抱負を述べてゐる。
国際学友会と其事業
[#地から3字上げ]国際学友会会長 公爵 近衛文麿
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国際間の平和と親善とを促進する最も有力なる方途の一つは温かき理解の下に行はれる各国文化の渋滞なき交流にあると信ずる。昨夏不幸にして惹起されたる支那事変を通じ我々の痛切に感ずる事は、如何に国家間の隔意なき意見の交換と提携が行はれ難いかと云ふ事である。
近年国際関係が複雑多岐になつたが、各国間に文化の交換が不断に行はれ、国民的性格、教養を互に理解し合ひ真に人類の幸福に貢献せんとする意図を有するに至るならば世界は現在より以上の平和を享受することが出来るであらう。
諸外国の日本に対する認識も、七十年前に較べれば、雲泥の相違であつて、その間日本の為した進歩に驚異の眼を瞠りつゝあつた世界の人士も最近に至つて、唯、表面に現はれた物質文明の形相のみならず、これを築き上げた原動力への認識探求、即ち日本精神の研究熱が澎湃として興つて来たのである。而してその最も顕著なる現はれは各国の留学生の本邦に渡来するものが著しくその数を増した事である。
顧れば、明治維新後、幾多の日本青年が青雲の志を抱いて世界各国に遊学した。その学び取りたる新知識と我国の伝統的精神との渾然たる融和こそ今日の日本を
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