文学者が、そのへんにいくらもゐるのだから、心細いものである。目先のことばかり大事がるわけではないが文芸家協会は、会員の大部分並に、会員外の文筆業者がまつたくご存じない間に、日本文化史上画期的な著作権改正の仕事をやり遂げてゐる。
 文芸家全体のより一層積極的な関心がありさへすれば、日本文学のために、更に、世界文化のために、微々たる作品や論文一束に比すべくもない事業を達成し得ることゝ思ふ。それぞれ自分の畑といふものがあるにせよ、文学者一般がこの種の問題を俗事として軽蔑するところに考ふべき事実がひそんでゐる。
 それなら、国語問題はどうか? 小学教育の問題は? 新劇の問題は? 隣邦支那との文学的交渉の問題は? 出版合理化の問題は?
 このへんでやめておかう。



底本:「岸田國士全集23」岩波書店
   1990(平成2)年12月7日発行
底本の親本:「東京日日新聞」
   1937(昭和12)年1月24〜26日
初出:「東京日日新聞」
   1937(昭和12)年1月24〜26日
入力:tatsuki
校正:門田裕志
2009年11月16日作成
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