国防と文化
岸田國士
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)国風《くにぶり》
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いよいよ事態が切迫して来たやうであります。それに対して国を挙げての準備は整つてゐるでありませうか。
議会でも、質問を中止して、直ちに予算の審議にはいりました。
国家総力戦の真のすがたが、国民一人一人の眼にはつきりわかる時が近づきつゝあります。
われわれはこゝで、国の力といふことを考へてみなければなりません。国の力、即ち国民の力であります。武力といひ、経済力といひ、外交の力といひ、すべてこれ、われわれ日本民族の現実の行為であり、その肉体と精神の火花であります。そして、それらすべてが、広い意味の文化をこゝに示すものであります。
先日、議場に於る陸海軍大臣の声明が新聞に出てをりましたが、それは誠に意を強くするに足る言葉でありました。
しかし、軍備はいかに充実しても、充実しすぎるといふことはありません。なぜなら、敵国は必ずその上に出ようとするからです。経済力はと申しますと、これまた御承知の通り、日本はそれほど恵まれてゐるとは云へません。では外交は? 然し、外交の終るところ
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