……演芸欄の編輯へ繋いで下さい……。はい、こちらは天城です、天城更子……。え? はつきりつて、はつきり云つてるぢやありませんか……兎に角、繋いで下さい……。人を馬鹿にしてるわ。話中……はい、……あゝ、あなた演芸欄の方……さう、今朝ほどはどうも有りがたう。いゝえ、実はね、あの絵のことで、あたし、少し怒つてるのよ。三堂微々とかつて、どんな奴か御存じ? さうでせう、名前なんかちつとも聞かないわね……」

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○日の出新報の編輯局。

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記者武部が電話をかけてゐる。
「いや、さういふわけぢやないんですが、展覧会では、あの画が素晴らしく評判なんですよ。それで、なんですか、あなたから、何か抗議でも下さるおつもりですか」

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○更子――

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「さあ、どうするか、まだきめてませんけど、何れ、相談をしてから……」

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○武部――

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「今からすぐ伺つてもいゝですか。……午前中ですね、はい、わかりました。ぢや、さよなら……」記者達は、この「特種」を囲んで、策戦をめぐらし始める。
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