り]
[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
微々  (慌てゝ)御免なさい、御免なさい。
更子  (急に顔をあげ、にツと笑ひかけるが、また、顔を両手でかくし)あたしも、御免なさい。
[#ここから5字下げ]
さう云つたかと思ふと、再び、突つ俯して、声をあげて泣きはじめる。

[#ここから1字下げ]
○広い庭園を前にしたレストランのテラス。

[#ここから5字下げ]
夜だ。
天城更子、三堂微々、横川洗身の三人が卓子を挟んで、食後のカフエーを飲んでゐる。
[#ここで字下げ終わり]
[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
横川  これで、仲直りができたわけだな。この、世にも稀れな二人の喧嘩は、結局、二人の損にはならなかつたと思ふが、どつちも引つ込みがつかなくなると困るからな。まあ、好い加減のところで、媾和条約を結んだ方がよからう。何か飲みますか三堂君……?
三堂  更子さんは……?
横川  この人は、ミリヨン・ダラアだ。さうだらう。
更子  なんでも結構……。
横川  いやに神妙だね。
更子  飲まないつて云つてやしないわよ。
[#ここから5字下げ]
横川が、ボーイに、ウヰスキイを
前へ 次へ
全49ページ中44ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
岸田 国士 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング