を拒み)いや、それも取つてお置きなさい。また、あとで、こつちだなんてことになると厄介ですから……。(椅子にかける)
横川  なにを騒いでるんだ。
更子  (横川に今受け取つたダイヤを示し)ねえ、これでせう。
横川  (検めて)うむ、これだ。
更子  さつきの……ねえ……今、駄目……?
横川  (鷹揚にポケツトから小切手を出して更子に渡す)
更子  ぢや、これ……御約束の御礼ですわ。
微々  (その小切手を、横川の方に突き返す)
更子  どうしてゞすの……(また、それを後ろの方に押しやる)
微々  (黙つてまた、押し返す)いりません、こんなもん……。
更子  それぢや、あたしが困りますわ。
微々  どうしても、御礼をなさりたいんですか?
更子  ……。
横川  まあ、受け取つてお置きなさい。
更子  ほんとに……。
微々  僕は、その代りに、ほかのことを要求します。
更子  なんですの?
微々  あなたの漫画を、もう一度描かせて下さい。(こだわりのない微笑)
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更子は、微々の顔をぢつと見つめてゐるが、やがて、傍らの長椅子の上に、わツと泣き伏す。
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