し……変ですわ。どう、もう一度。……すみません……。
微々 (渋々)困るなあ……さうなんべんも……。ぢや、これで、はつきり、どつちときめて下さい。あとから苦情をおつしやつても駄目ですよ。
更子 (二つを見比べ)なんだか、わからなくなつちやつたわ。さうねえ、まあ、どうしても、こつちね。ぢや、これつていふことにしときませう。
微々 (ゆつくり手をのばし)さうですか。あなたは、かういふ品物を、しよつちゆういぢつておいでになるんだから、僕よりはたしかでせう。(手に取つて石を見て)さうですかなあ……。いや、たしかに、こいつが僕んでせう。なにしろ、こいつは、金五円の人造ダイヤですし、懸賞千円附の品物と並べられたゞけでも仕合せな代物ですよ。(蟇口にしまふ)
更子 では、御礼のことですけれど、ちよつとお待ち下さい。(奥へはひる)
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微々は計画の悪戯が、まんまと図に当つたので、頗る得意である。やがて更子が現はれる。
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更子 (微々に)あの、あたくし、今の、間違つてましたわ。
微々 (腰を浮かし)今の、
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