改行天付き、折り返して1字下げ]
六遍  自分の絵は、これで、手離すとなると惜しいもんでね。やつぱり、朝晩、眺めてゐたいよ。
わたる  幸ひ、気に入つた絵だけは、みんな売れずにすんだから有難い。
[#ここから5字下げ]
この時、微々は、傷ついた絵をそつとつまみ上げる。すると、額縁の中に、小さな光つたものを発見する。
[#ここで字下げ終わり]
[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
微々  やツ、これは不思議……。
六遍  なんだ。
微々  (大粒のダイヤを拾ひ上げ)これを見ろ。
わたる  彼女が落したつてやつだ。何処にあつた?
微々  こん中だ。(額縁の隅を指す)
六遍  こん中とは云へ、貴公一人のもんではないぞ。
微々  なぜだ?
わたる  こゝは、われわれの展覧会場だ。
六遍  千円は、おれたち三人が取るんだ。
微々  見つけたのはおれ一人だ。
わたる  そばにゐたのは、おれたちだ。
六遍  騒ぐな、騒ぐな。話はわかつとる。早くしろ、おい、微々!

[#ここから1字下げ]
○銀座の鋪道。

[#ここから5字下げ]
三堂微々が、額の包みを小脇にかゝへ、ぶら/\歩いてゐる。ふと、
前へ 次へ
全49ページ中34ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
岸田 国士 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング