こから5字下げ]
監督が、いら/\しながら、天城更子を待つてゐる。
手もち無沙汰な俳優たち。時間潰しの余話。
[#ここで字下げ終わり]
[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
女優A  あゝあ、誰かあたしを漫画に描いてくれないかなあ。
男優B  漫画の方が美人だつたりしてね。
女優C  いくら変に描かれても、それほど似てなきやいゝのよ。
女優A  ところで、更子さんのと来ちや、似すぎるほど似てたわ。人と違ふとこだけ描いたみたいね。
女優C  それより、第一、感じが出てるつたらないわ。
女優D  しかし、訴訟は、思ひつきね。向うもよろこんでるでせう。
女優A  ぐるだつて話もあるわ。

[#ここから1字下げ]
○支配人室。

[#ここから5字下げ]
高見が電話をかけてゐるところへ、天城更子が、扉をノツクする。
[#ここで字下げ終わり]
[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
高見  はい。(更子の姿を見て)よう、お早う。まあ、そこへ掛けなさい。えらいことをやつたのう。
更子  でも、あんまり口惜しいんですもの。
高見  ふん、それにしてもさ。大成功ぢやないか。
更子  なにが
前へ 次へ
全49ページ中25ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
岸田 国士 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング