かなか、目につきますな。
更子  それが困るのよ。
横川  かうしてみると、女の漫画つてものは、少いもんだね。あれや、誰だ。吉岡弥生女史か。それから……向うのは……。
嬉野  三宅やす子です。
更子  どうしたら、あたしがこんな風に見えるんでせう。考へちやふわ、全く。
横川  その苦心を見せるつもりなんだらう。
更子  さうだわ、なんでもないわ。この絵を買つちやへば、文句はないんだわ。
嬉野  すると、訴訟の方は……。
更子  それは別よ。今迄の分は取返しがつかないぢやないの。
嬉野  それはさうです。
更子  だから、それはそれで弁償させるとして、これから、この絵を人に見せなけやいゝのよ。ねえ、(横川に)あたしからぢや変だから、あなた、買つて下さらない。
横川  買つても、すぐは持つて帰るわけに行くまい。展覧会がすむまでかうしておくのが普通のやうだから……。
更子  そこをなんとか談判して下さらなくつちや。少しは高く買つてもいゝとかなんとか……。
[#ここから5字下げ]
六遍が、それとなく様子を見に来る。
[#ここで字下げ終わり]
[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
六遍 
前へ 次へ
全49ページ中14ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
岸田 国士 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング