六遍  ちえツ、うめえことをやりやがつた。
わたる  早速、注文だな。
六遍  正面からのをもう一枚つてところだらう。

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○タクシイの中。
[#ここで字下げ終わり]

[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
武部  高円寺はどの辺ですか。
微々  駅から北へ約十町。
武部  ぢや、私んちの近所だ。
微々  あの辺は、月収百円以下つてのが多いんだ。
武部  おほきに。あなたのお住居は……。
微々  やはり、その辺さ。
武部  三堂さんは、まだお一人ですか。
微々  一人でも半分みたいなもんだ。
武部  すると、お暮しは、あまり、お楽の方ぢやないですな。
微々  御察しの通り。しかし、そこは半分の有難さで、人並にかゝりもないからね。
武部  益々面白いな。天城更子嬢の要求を、彼氏、如何に受け流すか、これが見ものだ。
微々  なんか、要求をされるのかね、先生。
武部  そいつは、職業上の秘密でね、まあ、あとからお聞きなさい。夕刊には、何れ、大々的に書くつもりです。

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○高円寺 三堂微々の住居。

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微々は武部を案内し
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