もの」を書くことができるであらう。しかしながら、万一、二十歳にして戯曲に傾倒し、自ら、筆を執らうとするものがあつたら、先づ、天才の折紙をつけて貰はなくては、危険である。
 これは、要するに、戯曲家的稟質の成長は、想像よりも観察に負ふところが極めて大からである。
 この一文は、「戯曲及び戯曲作家について」時評的な感想を纏めるのが目的であつたが、徒らに、空言を弄した傾きがないでもない。殊に、読み返してみて気になるのは、聊か傍若無人な八つ当りだ。読む人によつては滑稽であらうが、私は、この蕪雑な感想を、将に興らんとしつつある新戯曲時代のために「捧げ」たつもりだ。
「月並で、しかして、偉大」な戯曲が一つでも出てくれれば、私は、黙つて引退らう。(一九三二・六)



底本:「岸田國士全集21」岩波書店
   1990(平成2)年7月9日発行
底本の親本:「現代演劇論」白水社
   1936(昭和11)年11月20日発行
初出:「新潮 第二十九年第六号」
   1932(昭和7)年6月1日発行
入力:tatsuki
校正:門田裕志
2007年11月20日作成
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