苦労人クウルトリイヌについて
岸田國士

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【テキスト中に現れる記号について】

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(例)どこかとぼけ[#「とぼけ」に傍点]た
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「我家の平和」の作者、ジヨルジユ・クウルトリイヌは、私の最も好きな近代劇作家の一人である。
 彼の名は巴里に於て、甚だポピユラアであること、我が菊池寛氏の東京に於けるそれの如く、彼の芸術の特長は、わが柳家小さん、そしてわが岡本一平氏のそれに似たものがある。軽妙で、辛辣で、どこかとぼけ[#「とぼけ」に傍点]たところがあり、痛快味と、温かな情味とが程よく入れ交り、巴里生活のあらゆる感情のニユアンスを、心憎きまでに捕へてゐる。
 此の「我家の平和」は、彼の傑作の一つで、国立劇場コメデイイ・フランセエズの上演目録中に加へられてゐるので、私も、その舞台を観たことがある。
 たゞ、かう云ふ脚本を演じるために、彼我の俳優は、あまりにその素質に於て異つてゐると思ふが、当協会の伊志井寛君は、比較的喜劇に適してゐるし、花柳はるみ君も、此の役なら、持ち前の溌溂さを活かし得るだらうと思ふ。
 何れにしても、此の作者のもの
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