所謂「超民族性」について一応注意すべきであらう。雄弁に論議する劇は最も理解し易きものである。
ジョルジュ・クウルトリイヌ(George Courteline, 1860−1929)の小喜劇はモリエエルからラビイシュにつながる仏蘭西喜劇の伝統を代表する不朽の作品である。数多き珠玉的作品中からその代表作を選ぶことは困難である。また、一作を取り上げて、これを古今の傑作なりと称することは聊か気が引けるくらゐ「何気なき」風を装つたものであるが、先づ定評として、「ブウブウロシュ」(Boubouroche)「我家の平和」(La Paix chez soi)等を挙ぐべきであらう。一見平俗なやうに見える彼の文体は、近代ファルスの最も純粋な風格を創造し、現代世相の犀利な観察による比類なき道化味《ビュルレスク》は、天才の眼によつてはじめて伝へられるものである。
ジョルジュ・ド・ポルト・リシュ(Georges de Porte−Riche, 1849−1930)は、精密な恋愛心理の解剖家として、ラシイヌの衣鉢を継ぐ名作家である。アントワアヌに従へば、仏蘭西近代戯曲史の頂点は、ミュッセ、ベック、ポルト・リシ
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