われわれの考へるいろいろな方向が暗澹として来る次第で、こゝにも十分な反省が必要であります。
 次に、現代日本の青年にはもつと自信をもたせるやうに仕向けるべきです。あれをやつてはいかん、これをやつてはいかんといふやうな状態で、青年を束縛することはよほど考へもので、青年はもつともつと伸びさせたいものです。世の中がいつどう変るかも知れぬといふ不安が、今までは確かにあつたので、青年に本当に自信をもつてやれと云つても無理だつたかも知れませんが、問題としては、政治自体に安定性を与へるといふところまで青年に奮起して貰はねばならないのです。
 労務者と話してみると、いぢけてゐて、皮肉で、絶望的な人が多いとのことですが、さうとすれば今の知識層と共通なものがあるわけで、まあ、さういふ時代とでもいふのでせうか。しかし、その原因が何処にあるかといふことになれば、やはり真の意味の文化政策といふものがない、政治に文化性がないといふところへ逆戻りをしてしまふのです。日本人の矜りといふものを具体的に示すやうなさういふ政治――文化政策が行はれなければ、青年はなかなか希望がもてないでせう。さういふ理想は昔の政治家はもつて
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