特に置くといふことが、すでに非文化的といへるかも知れません。また「文化部」を受持つてゐる人間だけが、文化のことを考へればいゝなぞと考へられたら、このくらゐ馬鹿な話はないのであります。
横道へはひりましたが、次にドイツの工場の話――仕事のなかに取り入れられた音楽的な要素――かういふ話は聞くだけでも非常に爽快ですが、そのやうな一つの勤労形態といふものを単に「西洋的文化」と片附けてしまつてよいかどうか、日本にも当然生れて不自然でない文化の形ではないかどうかといふことです。もう一つは、やはりドイツの映画で見ると、勤労奉仕をやる時には指導者がいろいろな部署を見廻る。その部署のまた一人の指導者が大指導者を迎へて万事軍隊式にやつてゐるところがありますが、見廻りに来た大指導者と握手をして、「ダンケ」とやります。この表現は全く日本にないものですが、これが果して飽くまでも「西洋的」なものであつて、日本でこれをやつたらをかしいかといふ問題です。このやうなことが、これからわれわれの考へて行くやうな文化の向上といふことゝどうしても関係がありさうです。単に西洋のものは「西洋的」としてこれを忌むといふ風であると、
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