学校劇 其の他
岸田國士

 文部大臣が学生の芝居を禁じたことは、その動機に於いて僕は大賛成である。と云ふのは、従来行はれてゐるやうな「学校劇」は、大体に於いてその鼓吹者が信じてゐるやうな芸術的乃至学術的欲求から生れたものではなく、寧ろそれとは反対な卑俗極まる趣味の発露に過ぎないからである。
 試みに、所謂学生劇なるものゝ本体を突き止めて御覧なさい。少し「頭の佳い学生」は、白粉を塗つて「役者の真似」なんかしたがりはしませんから(素人劇については別に意見がある)。
 然しながら、文部大臣が青年教育に目覚め、民族文化の正しい指導者たる実を挙げる為めには、もう一歩踏み出さなければならない。
 学校劇を禁止するもいゝ――その効果は別問題として。
 たゞそれと同時に、先づ国立演劇学校を設けなければうそだ――学生の軍事教育などより前に。

「シネマの向上をはかる為めに、文芸物を専門に見せる文芸活動写真協会生る」とのこと。耳よりな話である。
 処で今日まで、文芸活動写真として紹介された映画は、その原作者の名に於いて、標題のもつ親しみに於いて、主題の美しさに於いて、勿論、通俗的フイルムの馬鹿馬鹿しさに
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