ことは、大いに警戒しなければならんと思ふのです。一番極端な例は、八紘一宇とか、臣道実践とかいふことを、口の先で云つてゐれば、万事通用するなどゝ簡単に考へてしまふことです。鼻の頭にちよつと看板をぶら下げて置けばいゝといふことになつては大変だ。

     隣組の力

 隣組が出来たので、自分たちの生活内容が豊かになつたと喜んでゐるものもあり、或る処では、隣組が出来たから非常にうるさい、何か拘束を受けるとか、私生活の秘密を覗かれるとかいふので、いやがつてゐるやうです。が、運用の仕方によつては、非常にうまく行つてゐる例を知つてゐる。僕等なんかの側から云へば、隣近所と交際したからといつて、損をするところはないのだ。個人といふものゝ本来の観念から云へば、ちつとも他人から侵されるものはないので、隣組は、非常に理想的な形で僕等の頭に浮ぶんです。僕等の知つてゐる連中のなかでも、やああれはうるさい、迷惑だと云ふのが相当ゐるんだけれど、考へてみると、うるさいなどゝ云ふ連中は、これが旧体制と云つていゝかどうか知らないけれど、どうも時代の落伍者といふ気がする。ちよつと背中をどやしてやりたい人物に、そんなのがゐ
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