れば、僕等の云ふことがそれ程わからなかつたり通じない筈はないといふ風に今までは思つてゐた。しかし、たしかにさういふところもあるには違ひないが、今では、それをどうしても通じさせねばならんのです。向うに勉強なさいと云つたところで間に合はない。どうしても、自分たちの云はうとしてゐることを、相手がわかるやうな言葉で、或は云ひ方で表現することが必要になつて来た。しかしそのために、こつちが相手のレベルまでさがることはちつともないので、これははつきりしなければならぬところです。同時に向うの考へ方、例へば政治家としての考へ方について、われわれはさういふ要素があまり無さ過ぎて、今度は向うの表現そのものゝ中に、真理といふものを発見できない場合があるんです、あり得るんです。われわれのものの考へ方は、あまり現実から離れてしまつてゐるといふことも、一応反省しなくちやならない。その呼吸さへわかればわれわれが云はうとする主張が、もつと向うに正しく受容れられるところが随分ある筈です。お互の協力を強めるために、さういふ努力をすることが実は今日一そう必要なんぢやないでせうか。兎も角、今日の段階は、相手を克服して、自分がそ
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