仮面座の宣言
岸田國士

 仮面座創設について、同座創立同人諸君がわれわれに提示された宣言の内容は、可なり注目に値すべきものである。
 僕は、今、その各項目について、無条件に賛意を表するものではない。まして、あの抽象的な文字の羅列にそれほどおどかされてゐるものではない。たゞ、最も好意ある解釈に従へば、此の一座の同人諸君は、「芝居といふものを面白く見せよう」としてゐるらしい。これはたしかに有意義な企てである。
 明るい傾向の戯曲を撰ぶといふやうなことは、わざわざ吹聴する必要はあるまい。それよりも、戯曲の聡明な解釈によつて「不必要な暗さ」を一掃することに努めようではないか。
 定期公演と随時の試演は結構であるが、それは、先づ、相当の俳優を作り上げた上にして欲しい。在来の劇団が殆ど顧みなかつた此の一点に、諸君が力を注ぐか注がないかは、諸君が、「今迄のもの」より以上に出るか出ないかの問題である。
 レパアトリイを定めるのは「諸君の劇場をより効果あらしめる為め」であるといふ意味は僕にはよくわからない。想像を許して貰へるなら、恐らく諸君の努力をより有効に、諸君の理想をより明確にするといふ意味であら
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