…。
並木  (真顔で)するよ、お前の為めなら……。
並木の妻  (しんみり)さう云つて下さるだけで沢山。……(急に調子を変へて)ねえ、あなた、ほんとに無理なことはしないで頂戴ね。あたし、なんだか怖くなつたわ。
並木  ……。
並木の妻  あなたが、あゝいふお友達にまで、そんなことの為めに、肩身の狭い思ひをなさりやしないかと思ふと、あたし、ぢつとしてゐられないわ。
並木  だから、何も云ひ出しやしないよ、そんなことは……。たゞ、向うが……。
並木の妻  えゝ、それはわかつてるわ。だから、そんな時、きつぱりと、断はつて頂戴……。気を悪くさせないやうにね。(間)もう、これから、何が欲しいなんて決して云はないわ。
並木  それとこれとは話が違ふよ。都合がつけばいゝぢやないか。
並木の妻  いゝえ、だから、お友達とだけは、綺麗なおつき合ひをして頂戴ね。どんな場合でも卑下をしないですむやうな……。
並木  お前はそんなこと心配しないだつていゝよ。
並木の妻  いゝえ、心配よ、あたし……。ほんとに、今迄、気がつかなかつたの、そのことだけは……。
並木  ……。
並木の妻  あなたも、何時までもぶら
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