横槍一本
――外国文学の『味』――
岸田國士
−−
【テキスト中に現れる記号について】
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)われ/\
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この頃、二三の人が新聞や雑誌でかういふ議論をしてゐる。
「外国文学を味はふ場合、その国の人が味はひ得る味を、外国人たるわれ/\が同じやうに味はふことは不可能である」
至極尤もな説である。
多くの人々と同様、僕も、此の問題については再三考へたことがある。
然し、問題をもう一歩進めて、それならば一つの作品を、甲の人間が味はひ得る如く、乙の人間が味はひ得るか。
更に、問題を押し広めて、それならば、外国文学を味はふために何等の準備も必要でないか。どの程度まで準備をすれば満足だと云ひ得るか。
外国文学など味はふ必要はないといふ徹底的な態度に出られなければ、つまり、外国文学を味はひたいといふ欲望があれば、どういふ味はひ方ができればいゝのか。
その国の人間が味はひ得る味をそのまゝ味はふことができなければ、その作品を味はつたと云ひ得るか。
勿論、理想に於てゞある。
その味が、つまり、作品の芸術的価値を全部
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