A演劇を中断するより外はない。(合唱隊により、又は幕を下す等)
一、舞台は、同時に[#「同時に」に傍点]ただ一つの場所を示すにすぎない。
一、舞台上の言葉は、その人物の間で取交されるのを原則とするが、その実、多数の見物に呼びかけてゐるのである。
一、見物は劇場にゐることを忘れることもできるが、劇場にゐることを想ひ出すことで悦びを感じるのである。即ち、俳優[#「俳優」に白丸傍点]と、その扮する人物[#「人物」に白丸傍点]と、その人物を創造した作者[#「作者」に白丸傍点]、この三つの生命[#「生命」に白丸傍点]を同時に感じる時、最も完全な陶酔境に浸り得る。
一、観劇の時間は、疲労の度を考慮し、純然たるスペクタクルを交へるに非ざれば、約三時間を限度とする。
[#ここで字下げ終わり]
私は、以上の諸点を以て、最も重要な「演劇的条件」と見做すものである。これらの条件を無視することによつて、演劇の領域を拡大しようとする試みもなされたが、何れもそれは試みに終つて、やうやく、変態的一例としての興味を惹くに止まるのである。そこでこれら「演劇的条件」がそのままテクストたる「戯曲」の制約となるのであるが、
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