演劇統制の重点
岸田國士

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)朗誦《デクラマシヨン》

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)いろ/\
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     国家の権威と責任で当れ

 世界を通じて、演劇は今や膠着状態にあるやうである。歴史的にみてさういふ時代が過去にもむろんあつたが、この状態は当分続きさうな気がする。
 なぜこんな風になつたか、その原因をひと口に云ふのはむつかしいけれども、つまりは現在が芸術の開花に適しない社会的情勢にあることをまづ考へなければなるまい。そのうへ、演劇は特に近代企業として様々な矛盾する面を含んでゐて、その点、映画の生産と普及に押され勝ちであり、且、純粋芸術としての発展進化のうへでは、一定文化水準の観客層がこれを支持すべき物質的精神的の余裕をもつといふことが最大要件なのである。
 これはわが国についてのみ云つてゐるのではないことをもう一度明かにしておいて、さて、欧米に於ては、この危機が如何に当面の問題として処理されてゐるかはその国々によつて異るやうである。私は、自分の国のことについて識者の注意を促
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