テ来の舞台芸術家が企図したことであります。然しそれが真に芸術的効果を齎すためには、その不自然さが決して誇張のための誇張であつてはならない。有り得べからざることが、決して想像のための想像であつてはならない。新しい浪漫的演出の生命は、実にその象徴的精神に在るのだと云へます。
演劇の本質
一
近代演劇の運動は一面から見て、過去一世紀に亙る芸術運動の後を遥かに追つて来た観があります。
そして今日、演劇は――少くとも芸術的演劇は、明かにその進むべき道を示されてゐる。われわれはもはや、演劇の本質について何等論議を戦はす余地はないのであります。
音、形、運動、色、光、これらの要素を以て絵画ならざるもの、音楽ならざるもの、彫刻ならざるもの、建築ならざるもの、舞踊ならざるもの、文学ならざるもの、さういふものを創り出す芸術家を仮に舞台芸術家といふ名で呼びませう。そしてその舞台芸術家は、恐らくそれぞれの理論と趣味と才能とに基いて、絵画に近きもの、音楽に近きもの、彫刻に近きもの、建築に近きもの、舞踊に近きもの、扨ては、文学に……近きものを創造することが出来るでありませう。或
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