英国人だぞと威張つても、これが本格的なシェクスピヤの舞台だと折紙をつけてみても、外国人はそれほど感心もしなければ、珍しがりもしないのである。まして、それだから、現代の英国に好意をもち、尊敬を払ふといふ具合には行かぬ。そこで、現代劇を同時に並べる。場合によると現代劇だけをやる。むろん、現代作家の粒撰りであるが、これまた、老大家だけでは腕はたしかでも、新鮮味が足りない。新進作家のほぼ定評ある幾人かを拾ひあげる。作品は先づ他の劇場で成功裡に上演された試験ずみのものからはじめる。思想風俗の上から無難といふ条件は、それぞれの国柄に応じて守られるが、特に、外交上の考慮が必要である。何よりも自国の文化を毒し、他国人に誤解、或は過少評価せしめるやうなものは禁物である。国民性の弱点を誇大に示したもの、或は、無意識にこれを暴露したものもよろしくない。しかし、国民精神乃至国力の素朴な自画自讃は一層考へものである。自国民の矜りともなり、異邦人の共感を呼び、彼等をしてわれに親しみ、且つ、学ばんとする心を起さしめるやうな演劇は、国民挙つてこれを創り出さなければならぬものであらう。そしてこれはもはや、「宣伝」の意図
前へ
次へ
全37ページ中24ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
岸田 国士 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング