ケ楽著作物は世間に段々出て来るのであるが、どうも著作権法の中に明かになつて居らぬのであるから、果して保護を受くべき著作物の中に入るのであるかどうかといふことで疑を持つ者があるのであります。(中略)従来はこの音楽著作物といふものは美術著作物の中に入るといふ解釈になつて居るのであります。又条約においてもさういふやうな意味になつて居るのであります。それでありますから、極く厳格に解釈を致しますれば、現行法の美術著作物の中に入ると申して差支ない。然しながらさういふ疑義があります以上は、これを明かにして置くといふことは法律を制定する上に必要でありますから……(後略)
 因に水野氏はベルヌ条約にわが代表として出席され、日本における著作権法の起草者であり、またこの道の権威であることはいふまでもない。
 そこで、右のやうな経過に徴しても、この第一条は可なり法律家の頭を悩まし、また今後も悩ますであらうことは明かであつて、一切の新規な問題は、この一項の解釈如何によつて決せられるともいへるのである。
 そもそも、演劇や音楽の問題が、一国の最高知識を集めた議場で、かくの如く面倒な結果になるといふのは、世の中が日
前へ 次へ
全14ページ中5ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
岸田 国士 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング