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 が、要するに、その職能を原則的に示せば、「先づ脚本の解釈に標準を与へ、その精神を具象化するために最も有効な機械的設備を考案し、その製作を監督する一方、俳優相互の有機的関係を誘導規整することによつて舞台全体の統一調和を計る」にあるのである。
 フランス語で、〔Mise en sce`ne〕 なる語は、しばしば、「舞台装置」なる狭義の意に解される例もあるが、これは、装置の考案が、「演出」の主要な部分を占める場合に限られるやうである。
 然しながら、現在、日本の商業劇場に於いても、興行政策として舞台監督(演出者)の名を、作者のそれと並べて出し、装置家の名も挙げてゐるくらゐで、ある舞台が甲の「演出」であるといふことは、乙の「演出」と異る何物かを予想させ、また、事実、さういふ結果を示すと考へて差支ないのであつて、かかる地位を占める以上、当然、演出家はその「演出」の「独創性」によつて、完全に著作権法の保護を受け、如何なる契約によるにもせよ、少くともその人格権は飽くまでもこれを主張すべきものであると、私は信じる。
 即ち興行者が、某演出家にある脚本の演出を依頼した場合、雇傭関係によつてその興
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