る同僚議員の反応とかいふものが、如何に屡々軍人には「苦々しい」印象を与へるものであるか、これは私の想像であるが、ひとつ腹を割つて訊いてみたいものだと思ふ。
 人間心理の機微はしかし、さういふところにもあるのだといふことを、誰も考へてゐないであらうか。しかも、政治は、その人間心理と離れて存在するものでは断じてないのである。
 今更そんなことを論議してみてもはじまらぬといふものがあれば、私は、敢てこの機会に、こんなことを論議しなければならぬ理由を明かにしよう。
 それは、即ち、待望の新政治体制、並びに国民再組織の本質的な精神につながる課題だからである。
 こゝで私が先づ軍部に希望したいことは、軍部が抱懐する理想は、国民全体を少くとも今日に於ては、名実ともに「武人化」することにあるかも知れぬが、それはまあ理想であつて、そこまでは望まぬといふことをはつきり宣言し、その代り、新しい国民教育の参考として、将校生徒訓育の系統的理論と実際とを差障りのない限り自発的に公開してはどうかといふことである。
 これは一方、社会各層の軍人に対する認識を深め、心ある青年の奮起を促し、軍人自身にとつても、なんらか得
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