ない方が都合がいゝから、それぢや、五割引、半額にしときませう。包んでおあげ。まだいゝでせう。
末子 一度どんな様子か見て来いつて云はれたんですの。今日はゆつくりしてられませんわ。ぢや、お大事に……。なんて云つときませうね。大したことはない……つて云ふと、また安心しちまふし……。
卯一郎 まだ今日明日つていふほどのことはないぐらゐなところでどうです。それでいゝですよ。や、どうも失敬……。(大きな溜息をつく)
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末子ととま子は下に降りる。
やがて、卯一郎は、寝台の上に起き上る。
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卯一郎 どんな様子か見て来いとはなんだ。死にかけてゐたら、自分で見舞に来ようつていふのか。心掛けの悪《わる》い奴だ。あ、また苦しくなつて来た。これやいかん……。(寝る)医者を呼ぶとしたら、どいつにするか。(呼鈴を鳴らしながら)おい、奥さん……奥さん……。
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とま子がゆつくり上つて来る。
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卯一郎 なにを愚図々々してる
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