たが、この風習はやがて、発生の起因から遠ざかつて、近代的コケツトリイの一形態を成すものと思はれる。これを「性の反性的表示」と名づけてもいいし、「恋愛の友情化」と呼んでも差支へあるまい。
ここで、恋愛心理の歴史的考察を加へれば、男女間の「性的要求」は、従来の何人も予想しなかつた複雑さを加へ、凡そ恋愛が、異性のうちに異性を求める関係は、反射的に二重の作用を行ふ時代に到達したのである。即ち、男も女も、それぞれ両性を兼ね備へ、男は、個有の「性」によつて、女の個有の「性」に対し、その「女性的副性」によつて、女の「男性的副性」に対する新法則が生れたのである。
故に、これからの男が、恋愛に於いて、単なる男性であることは、結局、女の要求を全部的に満足せしめ得ないことになる。
この事実は、将来の社会に於いて、異性間の「友情」を、ある程度まで可能ならしめることに役立つであらう。少くとも、その公算を多からしめるわけである。
試みに、男女関係を図式で示せば、左の通りである。
[#男女関係の図(fig44590_01.png)入る]
底本:「岸田國士全集21」岩波書店
1990(平成2)年7
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