も「非文明」のそしりを受けなくてもいゝ、実に悲壮とも云ひうるある種の優しい感情の発露なのであつて、癩の問題に限つて云へば、少くとも、過去に遡つて日本人の社会道徳を云々する資格は、世界の如何なる開化民族ももつてはゐないことを保証し得る材料がこの書物のなかにあふれてゐるのである。
 それゆゑ、これは、日本にゐる西洋人のすべて、並びに、世界の癩研究家、救癩事業家のおのおのに是非この一本を読ませたいものだと思つた。が、しかし、今日以後、かゝる状態が一日でも続くことは、もちろん、日本の恥であり、もはや日本人を弁護する何等の理由も存在しないことを、遺憾ながら、こゝに特に声を大にして同胞の前に叫ばなければならぬ。(「知性」昭和十四年二月号)



底本:「岸田國士全集24」岩波書店
   1991(平成3)年3月8日発行
底本の親本:「現代風俗」弘文堂書房
   1940(昭和15)年7月25日発行
初出:「知性 第二巻第二号」
   1939(昭和14)年2月1日発行
入力:tatsuki
校正:門田裕志
2009年11月12日作成
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