といふ語を、『愛する』といふ語の同義語に用ゐたさうである。ヴイルドラツクの芸術は、殊にその『愛の書』と戯曲とは、此の言葉のニユアンスを伝へてゐる。」
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「彼の戯曲は、明かにデモクラチツクな相を備へてゐる。それにも拘はらず、最もアリストラチツクな魂を動かすに足るものである。彼は民衆の指導者でも弁護者でもない。彼はたゞ民衆の友である。」
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「彼の戯曲は、乾いた土を待ち侘びてゐる豊かな、そして平和な雨の最初の滴である。……われわれは、永い間、清らかな水に渇してゐた。」
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「彼は、俳優の為めに、何等の粉飾をも用意しない。……彼と俳優との間、俳優と見物との間に、彼はコンヴエンシヨンの仲介を求めない。総てが直接である。……多くの見物は、まだ、舞台の上で、人間と云ふ材料が有つてゐる理解と感激の源、円滑とつゝましさの泉、それを殆ど知らずにゐるのである。」
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「演劇を邪道より救はうとすれば、完全な舞台監督ばかりでは足りない。その作品に何等の卑俗味を加へない作者が必要である。われわれは、ヴイルドラツクを有つてゐる。」

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