る翻訳者があまり出ないやうな現状であるのは遺憾です。あまり名訳の定評ができすぎてその為に後の人が多少憚つて手をつけかねてゐるといふやうなことも一の理由であらうと思ひますが、思ふにこのシェイクスピア協会設立の御趣旨は、寧ろ坪内先生の名訳をして日本における定訳たらしめないといふやうなことにもあるのではないでせうか。どうか、シェイクスピア協会は将来に於いて益々シェイクスピア熱を日本で煽つていたゞきたい。そして日本でもかのジェミエが後の時代になつてこそシェイクスピアの新しい姿が解ると言つた、せめてその一部分をでもわれわれ日本人のなかで発見する人が出て来る日のあるやうにと期待する次第であります。

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昭和六年四月日本シェイクスピア協会の主催にかゝる講演会の速記で同会々報第二号に載つたものである。
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底本:「岸田國士全集21」岩波書店
   1990(平成2)年7月9日発行
底本の親本:「現代風俗」弘文堂書房
   1940(昭和15)年7月25日発行
初出:「日本シェイクスピア協会会報2」
   1931(昭和6)年12月30日発行
入力:tatsuki
校正:門田裕志
2007年11月20日作成
青空文庫作成ファイル:
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