呪咀と祈願の交錯に終始する人生史の象徴的記録である。
私が、この作品に打たれた理由の一つは、作者が、微塵も正義派的感傷を交へずに、しかも、限りなく暖かい作品を書き得たといふことである。標題の「恐るべき子供たち」は、頁を繰ると共に「愛すべき子供たち」として読者の心に映るであらう。私は、屡々、フランスの親たちが、その子供らについて他人に語る時、“Ils sont terribles”といふ言葉を濫用してゐたやうに記憶する。日本の親なら「どうも、乱暴でしやうがございません」といふところだらう。コクトオは、この親たちの如く、その「恐るべき子供たち」について語つてゐるとはいへない。しかしかれは少なくとも、それらの子供たちの一人である。
最後に、この訳書を手にする人々が、その見事に内容的な装幀と、憎々しくスマアトな挿絵を見て、この「恐るべき翻訳者」は、羨ましい武器をもつてゐることに気がつくだらう。
底本:「岸田國士全集21」岩波書店
1990(平成2)年7月9日発行
底本の親本:「東京日日新聞」
1930(昭和5)年10月20日
初出:「東京日日新聞」
1930(昭和5
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