点に陥るものではないかと思ふ。
 が、しかし、シュアレスは、彼自身、決して民族的立場からこの「三人」を取扱つてゐるのではない。彼は飽くまでも、近代に生きる孤高な悲劇詩人として、これらの先輩に熱烈な握手を求めてゐるのである。彼の批評の眼は冷たく凍つてはゐない。その分析は深く内奥の秘密を探る如くであるが、寧ろ常に、誠実な挨拶であり、率直な歓呼に外ならぬ。
 私はこの書が日本に紹介されることを望み、山本書店主に勧めてその翻訳を、最も適任と思はれる宮崎嶺雄君に委嘱した次第である。それ故、内容、訳文ともに、私は責任を以てこれを江湖に推薦し得ることを悦ぶものである。(一九三五・三)



底本:「岸田國士全集22」岩波書店
   1990(平成2)年10月8日発行
底本の親本:「時・処・人」人文書院
   1936(昭和11)年11月15日発行
入力:tatsuki
校正:門田裕志
2009年9月5日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんで
前へ 次へ
全3ページ中2ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
岸田 国士 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング