アトリエの印象
岸田國士
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【テキスト中に現れる記号について】
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(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)カン※[#濁点付き片仮名ワ、1−7−82]スに
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私は巴里滞在中、二三の画家諸君と識り合ひになり、ちよいちよいアトリエを訪ねるやうなこともあつたが、いつでもその仕事振り、生活振りに多大の興味を惹かれた。
第一に、いかにも楽しさうに仕事をしてゐる。母親が娘に晴着を著せてゐるやうだともいへるし、子供がお土産に貰つた寄木細工を弄んでゐるやうだともいへ、或はまた、酒飲みが晩酌の膳に向つたやうでもあり、善良な夫が細君の独唱を聴いてゐるやうでもある。
第二に、訪問者の相手をしながら、平気でカン※[#濁点付き片仮名ワ、1−7−82]スに向ひ、それでさほど煩はされもせず、訪問者も一向退屈しないといふことである。これは人によつても違ふのだらうが、さういふところは、われわれ原稿紙に向つて字を埋めて行く商売とは甚だ隔りがある。
――どうだい、この絵は……
――面白いね。
話は甚だよく
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