つてわれわれを迎へてくれる、明るい、懐かしい谷の名だといふお話。
帰つて、ママにそのことを云ふと、あたしの顔をぢつと見つめながら、「あたしも一緒に行つてよければ……」とおつしやる。
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二月二十七日(日曜)晴
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急に巴里に帰ることになつた。
熱は下つたのだけれど、院長さんはもう少しゐた方がよからうとおつしやるのを、なぜだか、ママは是非今日発たうと言つてきかない。それが昨日の話。
あたしはもつと此処にゐたい。一生でもいゝからゐたい。
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底本:「岸田國士全集21」岩波書店
   1990(平成2)年7月9日発行
底本の親本:「令女界 第八巻第二号」
   1929(昭和4)年2月1日発行
初出:「令女界 第八巻第二号」
   1929(昭和4)年2月1日発行
入力:tatsuki
校正:門田裕志
2007年11月14日作成
青空文庫作成ファイル:
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