。しかも、彼の領土は不本意にも再び惨憺たる戦場と化してしまつた。
中立国の名誉といふものについて、私はこれまであまり考へてみたことはない。諾威も丁抹も和蘭もおなじ中立国であり、厳正中立を標榜することゝ中立を犯すものを武力的に防がうとすることゝの間に、民族の矜持を外にして、どれだけの現実的意味があるかといふことも、私にはまだ十分納得のいかぬところがある。
それにしても、一旦英仏に援助を求めともかく連合軍の協同作戦に参与しながら、われに利あらずと見て、国軍降伏の挙に出るといふことは、味方からいくら不信の謗を受けてもしかたがない。それを忍んでもなほかつ、ヒトラーと和を結ぶことが白耳義にとつて自然、かつ有利であるかどうか、そこのところがこれからの問題であらう。
青年王レオポールの二十世紀的性格がそこにみられるとしたら、父王アルベエルは地下でなんと考へてゐるか?
パリに退避した白国政府は、王位剥奪を決議し、これを発表したと伝へられてゐる。ヒトラーは、これに対して、ブルユツセルに新政府の樹立を促進し、依然レオポール三世の国王たることを承認することも可能である。
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