か、疑問と云へばその一点である。
 が、私は、白耳義がどうなるといふことよりも、こゝのところ、レオポール三世がどうするかといふことの方に興味がある。
 英仏と独伊、自分を見限つた現政府と、まだ忠誠を誓ふいくらかの国民と軍隊、之らの間に立つて、失意と希望、汚辱と自負のヂレンマを切り抜けねばならぬ運命が彼を待つてゐるのである。
 帽子を脱いだ写真の横顔をみて、ふと私は古いデンマークの王子ハムレツトの風貌を想ひ出した。そして、より近代的に一大悲劇の主人公がそこにあると感じた。



底本:「岸田國士全集24」岩波書店
   1991(平成3)年3月8日発行
底本の親本:「東京朝日新聞」
   1940(昭和15)年6月1日
初出:「東京朝日新聞」
   1940(昭和15)年6月1日
入力:tatsuki
校正:門田裕志
2010年1月20日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
前へ 終わり
全2ページ中2ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
岸田 国士 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング