これからの戯曲
岸田國士
文学の一部門たる戯曲が文学の大勢に従はない訳はない。それで「これからの戯曲」といふ問題は「これからの文学」が如何なるものであるかを解決することによつて、自ら明らかになる訳であるが、然し、それだけではまだ十分ではない。何となれば、文学の中でも、小説は小説、抒情詩は抒情詩、戯曲は戯曲で、それぞれ、ジャンル(様式)としての進化を遂げなければならないからである。故に、「これからの戯曲」は「これからの文学」なる一般特質を有つであらうと同時にその特質と並んで、別に一つの特質を示さなければならないことになるのである。
私は、与へられた問題を、かく狭義に解釈して、「これからの戯曲」が「これまでの戯曲」から、如何なる点で区別さるべきかを述べてみることにする。
先づ、それがためには、「これまでの戯曲」とはどんなものであるか、それをはつきりさせておかなければならないが、元来、旧いものといひ、新しいものといひ、その区別は批判者の立場によるものであることを注意しなければならない。私は、一方、眼を世界劇壇の大局に注ぎながら、しかもなほ自分の足を、飽くまでも日本現代の戯曲界の上に置
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