多田が、牛肉の包みと、トマトの袋を提げて帰つて来る。
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彼女 どうもありがたう。それぢや、そのお話は後で伺ふわ。
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(炊事場にはひる)
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多田 何の話だい?
阿部 ちよつと秘密の談合だ。
小森 秘密といふほどでもないが、今、発表したくないんだ。いづれ君にも後援は頼むよ。
多田 こいつの仕事かい?
小森 うむ、まあ、そんなことだ。頼むから、今日は帰つてくれ。君がゐちや、話がしにくいんだ。
多田 そんなら、おれの方を先へ話さう。実は、そのことでやつて来たんだが、君たちがゐれば、君たちの意見も聞きたい。かういふ話があるんだがどうだらう。おれが前に世話になつたことのある老教授なんだがね。今、隠退して著述に没頭してゐるんだが、助手の外に、もう一人、ほんの雑用だけをする若い人を探してゐるんだ。条件は、専門の学問はいらないから、快活で、気転の利いたなるべく生活の苦労を知つてゐる人といふんだ。午前九時から、午後四時まで、昼
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