特に誇りとすべき発見であらうと思はれる。
 戯曲の主題が所謂「劇的」でなければならないといふ主張は、小説の主題が所謂「小説的」でなければならないといふ時代の因襲的観念であつて、戯曲が戯曲たる所以は儼然として、その外にある。結論を急げば、戯曲の本質的「美」は、人生の真理を物語る活きた魂の最も諧調に満ちた声と姿、最も韻律的な動き(響きと云つてもいゝ)の中に在るとは云へないか。「語られる言葉」と「行はれる動作」の最も直接的な、最も暗示的な表現、そこからのみ生れる心理的詩味のうちにあるとは云へないだらうか。
 山本有三氏の近業は、この点で興味が深い。



底本:「岸田國士全集19」岩波書店
   1989(平成元)年12月8日発行
底本の親本:「我等の劇場」新潮社
   1926(大正15)年4月24日発行
初出:「時事新報」
   1924(大正13)年12月5日
※「時事新報」掲載時の題名は「芝居はどこが面白いのか」。
入力:tatsuki
校正:Juki
2008年11月30日作成
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