『私の生活技術』の跋
岸田國士

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 現代の日本人は正しい「生活観」をもつてゐないといふことが、いろいろの場合に証明できるのであるが、それと同時に、広い意味における「生活の技術」を何時の間にか失つて、非常にギゴチない、国民としてはある意味で可なり損な「生活のし方」をしてゐる事実を誰も否定できないと思ふ。多くの人はその原因がどこにあるかも気がつかずに、たゞ、世間とはかういふものだとして、めいめい別に新しい「生き方」を考へようとしないのである。
 私は、かういふ時代に、欧米人の「生活」そのものを謳歌する気にはなれないが、彼等は彼等なりに、はつきりした生活観と、自然に磨かれた一種の生活技術とを身につけ、それによつて、仕事の能率をあげ、健康を保ち、社交を楽しみ、かつ、民族的優越感を満足させてゐる点に思ひいたれば、われわれ日本人が何故に、今日、「生活」といふ問題を更めて検討してみなければならぬ羽目に陥つたかはおのづからわかる筈である。
 われわれの祖先は、それぞれの
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